再びの、とっておき

2015年10月26日

振り返れば今からちょうど一年ほど前。
 
 

どこかでとっておきの一着のはなしをしました。

そして、今年もその季節がやってきましたよ。
 

 
 

 

niuhans / ダブルフェイスステンカラーコート col:KHA
 
 
カシミヤ混の滑らかな生地を贅沢にダブルフェイスで使用した一枚仕立てのコート。
デザインに関してはこの上なくミニマルです。
 
ダブルフェイスとは同一の生地を裏面で張り合わせて一枚地にした生地のこと。
niuhansでは毎冬このダブルフェイスの生地を使用したコートにこだわりがあります。
 
滑らかでとろみのある上質な生地の良さを最大限に生かす為に、性質の違う異素材の裏地を付ける仕立てをせずとも
丈夫さと暖かさ、着心地の良さを実現させる為の製法をとっています。
 
そうすることで、本来必要な芯地や接着芯などのパーツを減らすことができ、その分柔らかく、驚くほど軽いのです。
 

裏地が無いとアウターとしての防寒性に不安を持たれる方も多いですが、
獣毛のフェルト化された生地が二枚重なっているためこれまた驚くほど温かいです。
例えるならば裏地が無いように見えて、実際は表地と同様の生地が裏地にも使用されているようなものです。
 
 
また、特筆すべき点を一つ抜粋しますと、パーツの繋ぎ目、袖や裾、襟端にあるべきステッチが見当たりません。
一見、僕みたいな素人が見ると一体どのように繋ぎ合わせているのだろうという疑問が生まれます。
 

これは”毛抜き合わせ”という技法で、二重織された生地の裁端を一度割いて開き、内側に仕舞い込んで処理しています。
 
上等なオーダーメイドのテーラーにみられるこの仕立ては、マシンメイドでは不可能な為、
職人の手縫いで仕上げています。またこの仕立てを美しく仕上げるにはそれ相応の経験と技術が必要となります。

 

 

 
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
 
写真では伝わりにくいと思います。これは実際に見て触れて頂きたいです。ほんとに感嘆のため息が出ます。
 
その他にも、恐ろしく手間のかかる仕立てがふんだんに使われています。
 

 
 
これだけの技術が注ぎ込まれた衣服。
それはもちろん安くはありません。
しかし、実際に直に触れてみて、頭の中で解らないなりにあれこれ思い描いてみると、決して高くはないなと感じます。
 
 
そこまでの技法もいらないし、注ぎ込んだ結果それ相応のお値段になってしまう服なんて必要ないと感じる方も多いと思います。
そうでなくてもかっこいい服ももちろん沢山ありますし。
 
 
でも、脈々と培われた技術を有する意味は絶対的に存在して、
そうでなければ到達できない衣服の圧倒的な存在感を一度感じてもらえたらなと思います。
 

 
 
堅くなってしまいましたが、たまには、、、。