Monthly Archives: 6月 2017

2017年7月の営業予定

こんにちは。こんばんは。

 

2017年7月の営業予定です。
 


 
先月の石の写真はなんか怖いという意見が出て、だからという訳ではないですが、
再びYACHIYOさんのカレンダーにお世話になります。
赤字がお休みの日です。
 

遅めの梅雨が始まりましたが、気温の変化に体調を崩さぬよう、穏やかな日々を。
 

よき靴/うつくしい靴

 

靴をずっと探していました。

それも出来る限り美しい靴を。

 

ある時、出張先の街中で、ひとりの女性を見かけました。

その方は佇まいから姿勢まで、どこか凛とかっこよく、かといって嫌味のない雰囲気をもった方でした。

当然、まったくの見ず知らずな方なのですが、職業柄なんとなしに目で追っていました。(すみません)
 

ふと、その方の足元に目が留まりました。

それは普段はなかなか見かけない、おそらくボタンブーツというもので、クラシカルで、控えめに艶やかな黒いブーツが、その方のスタイルをきりっと引き締めているのだと感じました。
 

いつもなら、人の履いている靴をみると(これも職業柄か)、素材の質感や表面の加工法、製法やシルエット感、あと履いている本人の雰囲気から、海外のものか国内のものか、メーカーものか職人ものかが、なんとなしにわかったりするのですが、ボタンブーツという見慣れないものだけあって、その時は見当がつきませんでした。
気にはなりましたが、まさか直接聞くわけにもいかず、次の展示会場に急いで向かっているということもあって、そのまま記憶の片隅に追いやられていきました。
 
 

それから少しして、やはり靴を探していた僕ですが、
そんな中である一人の靴職人の方の存在を知りました。
金沢にアトリエを構える立野千重さんという方です。
その方の作られる靴を写真だけですが拝見して、息をのみました。
 

一目で丁寧に作られていると判る、控えめながら色気のある圧倒的に美しい靴でした。
 

※photo:TACHINO Chie HPより拝借

tachinochie.photo
 
 

写真のブーツは立野さんの代表作といえるもので、フランス留学の際に蚤の市で出会ったアンティークのボタンブーツから起想し生まれたもので、日本人の足型に合う木型を研究し、試作と改良を繰り返して現在の型に辿り着いたそうです。
あの日、脳裏に焼き付いていたあのブーツの佇まいにたがわない雰囲気でした。
今、思い返すとあれはもしかしたら、、と感じています。
 

ちょうど関東で展示受注会が催されるということで、すぐに連絡をとり、AUTHORとして初めて革の靴をオーダーするに至りました。
会場でお逢いした立野さん自身もとても凛と美しい女性で、当日はお着物姿で丁寧にご説明していただきました。
今、文章がちょっと堅いのはその時の緊張感が、書きながら蘇っているからなのでしょう。
 
 

さて、実は写真のブーツはまだ届いていないのですが、一緒にお願いした短靴と鞄が先に届いています。
 

tachinochie07
 

tachinochie06
 

tachinochie02
 
 

“OCULI”
ラテン語で眼球を意味する、6つの眼のついたボタンシューズ。
実際には着脱しやすいように黒メッキのギボシをあしらっています。
 

表は靴底に至るまで真っ黒ですが、内側は馬革で品のある赤です。控えめに金の箔押しで、隅々まで立野さんの美学が行き届いています。
 
 

tachinochie05
 

tachinochie08
 

tachinochie04
 

 

今回オーダーしたものは女性サイズだけなのですが、展示会では男性サイズの靴を自身も試着しました。
手縫いのマッケイ製法で、足の立体にほっそり添うように成型された立野さんの靴は少しきついです。
ただ、それがひとつ、僕の思う美しい靴の条件で、既成靴でも木型から成型に至るまで人の足の形をしっかり意識したものは、まるでオーダー品の如く、ぴったりと足を包み込み、最初はきつさを感じつつも、履きなれても靴の中で足が泳ぐことなく自分と一体化してくれます。それはそのまま履きやすさや、綺麗な歩き方にも繋がっていきます。
 
 

よく、日本人は元々の足の形の特徴や、スニーカーに慣れすぎているからか、革靴をジャストより大きくゆるく履く癖があるといわれています。
その為に、靴底の減りや甲の皺の入り方がいびつになり、歩き方、果ては骨格まで歪んでしまう。
最初は多少きつくても、履いていく中で、人の動き、体温、汗などにより足の形に変化していくのが本来なのです。
 

お洒落は足元からなんて言葉は、いつの時代からか云われ続けていますが、美しい靴を、しっかりとした意志と感覚で履きこなすということは、その人自身の佇まいに大きく影響していくものだと思います。
逆に言えば、足元にしっかり気を配れる人は、自然と全体に気を配れる価値観や哲学を持っているんだろうなと思います。
是非、よき人の元へ旅立っていって欲しいと思います。
 
 

そして、一緒に届いた鞄ですが、、
 

WPACC019
 

こちらは、立野さんがデザインし、信頼できる鞄専門の職人の方々と細部まで構造と造りを詰めて形にしたものです。
凛とした大人の女性として、またご自身がお着物をよくお召しになる際にも合わせられるように、無駄な装飾を徹底的にそぎ落としながらも
どこか親和性のある、身に着けやすいものとなっています。
 

ハンドルの付け根の金具も見えにくいようにし、がま口の口金も丁寧に吸い付くように柔らかい革で包んであります。
 

tachinochie10
 

tachinochie11
 

tachinochie12
 
 

男性目線としては、ブランドタグや無駄にきらびやかなメッキパーツなんかが悪目立ちするようなものより、こういった品のある鞄を女性には持っていただきたいのですが、、
そんなこと声高らかに主張したら、この街では恐ろしくて生きていけないのかもしれませんね。
 
 

さて、ここまで長々と書き連ねてしまいましたが、ほんとうは何も書かずにいたいんです。
ただただ、実際に目の当たりにして感じてもらいたいというのが、ほんとうのことです。
 

お目汚し、失礼しました。
最後まで緊張。
 

SCENE.30

 

AUTHOR
2017 s/s
SCENE.30

 


 

 

 

blouse : R&D.M.Co-
pants : Koton
 
 

 

 

shirt : 山内
pants : OLDMAN’S TAILOR
 
 

 

 

blouse : susuri
skirt : R&D.M.Co-
 
 

 

 
polo : OLDMAN’S TAILOR
pants : OLDMAN’S TAILOR
 
 

 

 

 

cut : R&D.M.Co-
skirt : R&D.M.Co-
 
 
 
スタイリングページ→ “SCENE”
アイテムページ→ “clothing” “accessories”

 
 

気になられたものがございましたら、お気軽にお問合せくださいませ。
 
 

補修/記録/記憶

MITTANの衣服は染め直し、繕い等の補修が可能です。

 
 

同ブランドの評価は年々高まり、県外からもわざわざ探しにきていただくことも今ではめずらしくないです。
でも意外に補修のことはまだまだ知る人が少なく、お店でも驚かれることが多いんです。
 
うちでは、補修のことは衣服を見ていく中で、折をみてお伝えするのですが、一番多いのが、以前染め直してもらった自前のロングジャケットを店頭に掛けてあって、
「着てみていいですかー?」、「あ、自前のですけど、どうぞー」という変なやりとりがよくあります、、(笑)
よく来てくださる方々は目にしているかもしれませんが、ハンガーには掛けず、ラックの端にひょいと引っかけてあるクッタリしたアレです。
 
でも、すごく説得力があるようです。染め直すとどうなるか、補修とはどういうことかを伝えるには。
 
これまでにも何度かお客様からお預かりした補修品はありますが、それはやはり人のものですし、届いてもすぐに主のもとに帰っていくので、あまり目に触れることが少ないので、興味を引くようです。
 
今回のは自分たちのものなので参考までにちらとご覧いただこうと思います。
 
まずは店主が3年くらい着ているカディーシャツです。
 

 
元は、もう今は展開がないチャコールのような色だったのですが、よく夏も羽織として着ていて、日焼けと繰り返しのお洗濯での退色で茶色っぽくなっていました。
でもその変化した色味も好きで、藍とか黒染めで濃くしてしまうのもなぁ、と思い、薄茶のように染まる胡桃で染め重ねていただきました。
褪せていた部分との色差を目立たなくするために2度染めていただいたようで、あぁ、得も言われぬ味わいある色合いとなっています。
 

 
と、ここまで書いて、補修前のbeforeがないじゃん!と気づきました。
でも、悪くなって帰ってくることはないのでとりあえずafterだけでも伝わるものがあると思います。
過去は心の中にしまっておきます。
 
はい、次。
 

 
ごぞんじ(?)、店主が1年の半分は履いていると云われる麻綿ロングパンツ。なぜそんなことが判るかって?だいたい二日にいっぺんは履いているからですよ。
 
実はこちらは一度、黒染め補修をお願いしています。
履き込みくったり良く馴染んだ生地、でもたくさん履いていたら日に焼けてしまいます。多少の退色は生地の質感的にも、これはこれでいいなとなるのですが、
あまりに焼けすぎてしまうとやはり履きにくくなってしまうものですよね。
そんな馴染んだ生地が再び色を取り戻して帰ってきたあの感動は忘れられません。そりゃまたたくさん履いてしまいます。
そして、遂に、擦れて御尻に小穴が開きました。※こちらももちろんbefore写真はありません。
 
股下や御尻の部分は、歩くときや座る時に擦れるので、実は膝などよりも生地が傷みやすく、裂けることが多いんです。
穴が開いたらちょっとはずかしい場所ですが、そういう理由なので堂々としましょう。
そんな場所なので、実際に穴が開いている箇所の周りの生地も実は同じように傷んでいることが多いので、ちょっと広く予想される範囲に裏から当て布をしてステッチを走らせます。
今回の補修を見ると、ちょうど可動が多い部分で、今後のことや履き心地のことも考えて左右対称且つ立体的に補修をしていただいています。
写真の様にステッチの入れ方も素晴らしく、実物をいろんな方に見ていただきたいのですが、ちょっとはずかしい場所なのでお見せすること叶いません。
 
また同様に擦れの多いポケット口も若干芯地が覗いていたので端をまつり、補修のミシンを入れていただいています。ご丁寧に問題のなかったもう一方のポケット口まで、、!

 

 
 
最後は妻のカットソー。
まず、こちらも2年ほど着ているのですが、切り放しの衿ぐり、袖口、裾のほつれ、衿端の裂けもありません。
最初はみなさん、その点を心配されるのですが、これをみると安心していただけます。
 

 
今回は脇下の縫いが外れていたのですが、そこは綺麗に直していただいたのでafterの写真も撮っていません。
また今回は色の変化について、最初は染め直しも視野にいれていたのですが、ニット物の染め直しは今まで無く、生地への負荷を考え相談したところ、
繊細な超長綿の柔らかさが失われないように、染め直しではなく、表面の細かな毛羽立ちを※バイオウォッシュで取り除き整えてみましょう、というご提案をいただきお願いしたところ、見事に色抜けしたような白い毛羽立ちがなくなり青い艶が戻ってきました。
 
このようにMITTANでの補修は、ただ単に目に見える問題に対してだけではなく、依頼人の要望に対し真摯に答えつつも、この先まだまだ着続けていく為に、人にとって服にとって
果ては環境にとって負荷のもっとも少ない最良の方法を考え選択してくれます。
 
 
お気に入りの衣服の寿命を延ばしてくれるだけではなく、その補修を通して自らの服への接し方を見つめ直す機会を与えてくれる、そんな気がしています。
 
作り手の方々の持つ責任、それを選び着ていく僕らの責任。
それぞれの想いに触れていける衣服は幸せな一生を得ることができるんだろうなぁって思います。
なんかしんみりしましたが、大切に着ている衣服の蘇る姿を是非色んな方にも体験して欲しいです。
 

何度か触れましたが、こうやって自分たちが着込んでいる服の姿や、体験が一番説得力のある接客なんですよね。
僕らはたぶん皆さんが思っているより、多くの服を季節ごとに買っていなくて、気に入ったものを長く着ます。着倒します。
お店自体も衣服をあまりファッションとしては見せていないので、常に真新しい色んな服を着るより、着馴染んだお気に入りの恰好で、その姿がなんかいいなぁって思ってもらえたら嬉しいんですよね。
この週末は補修したものをたぶんお店で着ているので、それもまた見て触れてやってください。それでは。
 
 
※バイオウォッシュ
微生物の持つ酵素の作用を利用し、繊維の表面や毛羽を食べさせて生地肌を整えさせる二次加工。
生地を柔らかくしたり、ユーズド加工などにも用いられる。
 

そこだから起きること

 

先日の大阪への出張の日。
戻ったその足で、兼ねてより気になっていた地下鉄池下駅よりほど近いmatoiさんに伺いました。
 
こちらはオーナーさんが直接フランスなどで買い付けてきた1900年代でも主に前半の時代の貴重な古着や古物などを扱うお店なのですが、そこに陳列された美しくも力強い、確かな価値を感じさせる物の魅力やオーナーさん自身のから滲み出る物静かで柔和な雰囲気と相まって、単に古着屋というよりかは、もっと文化的な博物館や美術館のような美しい静謐さに満ちた空間でした。
あぁ、確かにこの人だからこそできるお店なんだなと感じました。
 

雨の日で、閉店時間も近かったこともあり、またありがたいことにこちらのこともSNSなどで知っていてくれていたこともあってゆっくりお話もお買い物もできました。
ありがとうございます、また伺います。
 
 

 
さて、写真のものはそこで出会ったアフリカの太鼓。
ヨーロッパの路地裏にひっそりとありそうなお店で、結局選んだのは好きなアフリカのもの、、。
 
ただ、最初は僕自身も全く気に留めてなかったけど、アフリカの民具が好きという話から勧めてもらい、手に取って掲げてみると、たまたま背後にあった照明に照らされて表面に描かれた紋様が浮かび上がり、その一瞬で気に入り5秒後には、コレ買います!!と声張り気味で言っていました。
こういう時ってなんか思わず、張り上げますよね、声。、、張り上げない?
 
 

 
今はとりあえずお店の窓際に立てかけて薄ぼんやりとしているのを眺めていますが、照明と組み合わせて飾ってもいいなぁと、ひとり楽しんでます。
 

 
 
お店という、現実に物や人と対峙する場だからこそ起きる偶発的な出逢いのわくわく感を改めて感じることができました。
うちもそんな出逢いを提供できる場所になりたいなぁって思います。
 
と、久しぶりに日記みたいな内容。
気が楽だし、たまには書いていこう。
 
 
でわ、またお店でお待ちしてます。