分かつ/繋がり

2020年5月31日

 
 
5/23から始まったyasuhide ono展
 
このご時世、一度は開催断念も頭をよぎりましたが、オノさんやチームうつしきの皆様、関わっていただいたすべての方々の御助力、そして何より足を運んでくださった皆様の愉しむ意志と心意気によって無事、八日間の会期を有意義なものとして終えることができました。
 
 
今回は、展示日程を内容により、第一部と第二部に分けて構成しました。
この案は2月のうつしきでの打ち合わせの段階で決まっていました。
AUTHORでのオノさんの展示が二回目ということで、お互いに前回とは違った趣向でやりたいという思いを持っていたからです。
ただその時に決めた内容と今回は、状況によって変えざる負えませんでした。
 
結果的には二年前にすでに話が出ていた、オノさんが一人一人と対話し、オーダーメイドでその人の為にアクセサリーを作るという形を予約制でおこなう事が、ご来店者が被ることなく今の時世的にも合うのではと考え、急遽、実現する運びとなりました。
 
 
対話をする。
 
このような時世において、誰かと対面し、空間と時間を共有し語り合うということは、世の中に求められることに対して真逆をいくことだと思います。
しかし同時に、本来当たり前の行為としてあった事に対して、強い魅力を感じる方も多いのではないでしょうか?
会話をしたり打ち合わせをすることは今の世の中ではリモートでも可能ですが、そこをあえて物理的に距離を詰めることで生まれる親和性や緊張感は、一方通行ではないライブ感のあるコミュニケーションならではのものだと思います。だからこそ他に代えがたいものが生まれるのでしょう。
 
ご来店を促すことは、迎える側も、迎い入れられる側も現状リスクを伴います。互いにあくまで罹患していないことを前提に相対することとなりますが、そこに100%はありません。
それでも互いに決めた覚悟から出てくる意志の共有こそが、今回の展示形式の核となるものだったと、終えた今では確信をもって言えます。
 
難しいことを言いましたが、とにかく楽しく有意義な時間でしたね!ありがとうございました。
 
 

 
 
 
 
そして、一休止を経ての第二部の作品展。
こういった形も5月の前半の時点ではほとんど諦めていました。
 
作り手に多くの作品を展示の為に制作していただき、お店に並べる。それはもちろん沢山の人に見てもらいたいし、選んでもらいたい。ただ、それが出来ないというジレンマに苦しみました。
 
会期1週間前、もうさすがになんらかの告知をしなければいけない。そのぎりぎりの判断の時に愛知、そして福岡でも非常事態宣言が解除されました。
前日、むしろ最終決定の為の電話をする寸前まで答えに迷いましたが、オノさんと対話する中で、やりましょう、僕らの出口戦略ですね!と即閣議決定しました。
結果、告知期間も告知方法も満足に出来ませんでしたが、わざわざお仕事帰りに愉しみにして見に来てくれた方々、久しぶりに外に出て家族以外と会話しましたという方々の笑顔にお会いすることができました。今は、とりあえずその事に間違いはないと私たちは思っています。ありがとうございました。
 
 

 
 
 
今回の展示、店主的に裏テーマがあって、それは”分断”でした。
現状の世相や、これからの世界を考えると、これまであった物事や関係の繋がりを分かつ流れは容易に想像できます。
事実、これまでの数か月、私たちは誰一人例外なく何かしらから分断されました。
マスクをすること一つとっても、お互いの表情からその喜怒哀楽を読み取ることが難しくなりましたし、はじめましての人なんて、次に会った時に気付けるか正直自信はありません。
 
しかし、同時に、分断されることによって改めて気付けた事や、知れた事も沢山あったと感じています。
会えないことで感じる他者との繋がりの大事さや面白さ、仕事は無くなれど、反面得れた有意義な時間の過ごし方、もちろん逆に学校や仕事に出掛けれる当たり前の日常の楽しさ、など。
こんなこというのは不謹慎かもしれませんが、皮肉にも前向きに気付けることも多かったです。皆さんも少なからず感じていることがあるのではないでしょうか?
 
 
分断という言葉はどこかネガティブな印象を感じさせる一方で、それがあることであたりまえの裏に隠れてしまっていた”繋がり”を意識させてくれます。
今後、付き合っていかなければならないのなら、良い面悪い面をその真ん中から捉えて転じさせることができれば、案外悪くないんじゃないか。そんな事を思い、今展示を形作りました。
 
お店の空間の何か所かに垂れ提げた布は”分断”を表しました。
分かち、先が見通せないことで感じる不安感と、同時に見えないことでの安心感(今の世の中だと余計に)、それは両方存在すると思います。
また布の様に薄くうっすら透かしてみえるような隔たりでは分かつことができない繋がりや関係を今一度大切に感じることができたら、、、少しは心晴れやかにこれからの世界も過ごしていけるんじゃなかっていう願いを込めました。
 
 

 

 

 

 

 

 
ディスタンスも若干保てますしね、折角なので展示後もしばらくこのままにしておこうと思います。邪魔って思わないでね。
 
 
 
また、盟友ラフィユさんによる装花も、お願いする際にこの裏テーマを伝えて、イメージを組んでいただきました。
馬酔木の自然木を使い、第一部はあるがままの自然の美しさを、第二部はその一本の枝を分断して別々に配し、分断されながらもそれぞれの場所でも力強く新芽を伸ばし生き生きと成長する逞しさを表現していただきました。
 
 

 

 

 

 

 
 
 
植物の力はすごいですね。空気を変えてくれます。
装花してもらった瞬間に、あ、出来たって思いました。
この馬酔木、実は毒があります。ちょっと噛んでみただけじゃ何ともでしたが、読んで字のごとく馬が食べるとふらふらに酔っぱらっちゃうみたいです。もちろん人間も沢山食べたら同様に。
そんなありのままの自然の側面も感じられて、それもまた一つの在り方って、一人で感じ入っていた店主でした。ラフさんこの度もありがとうございました!
 
 
 
もっと、さらっと展示会後記として書くつもりでしたが、結局長く堅くなってしまいましたね。
前もって存分に告知が出来なかった反動だと思います。
 
異例づくめの今展示となりましたが、私たちとしては今、このような形で一つの催しを出来たことはとても意味のある事だと感じています。
 
まずは第一歩。
これまでの世界と分断された、新たな世界をこれからもてくてく歩いていこうと思います。