補修/記録/記憶

2017年6月16日

MITTANの衣服は染め直し、繕い等の補修が可能です。

 
 

同ブランドの評価は年々高まり、県外からもわざわざ探しにきていただくことも今ではめずらしくないです。
でも意外に補修のことはまだまだ知る人が少なく、お店でも驚かれることが多いんです。
 
うちでは、補修のことは衣服を見ていく中で、折をみてお伝えするのですが、一番多いのが、以前染め直してもらった自前のロングジャケットを店頭に掛けてあって、
「着てみていいですかー?」、「あ、自前のですけど、どうぞー」という変なやりとりがよくあります、、(笑)
よく来てくださる方々は目にしているかもしれませんが、ハンガーには掛けず、ラックの端にひょいと引っかけてあるクッタリしたアレです。
 
でも、すごく説得力があるようです。染め直すとどうなるか、補修とはどういうことかを伝えるには。
 
これまでにも何度かお客様からお預かりした補修品はありますが、それはやはり人のものですし、届いてもすぐに主のもとに帰っていくので、あまり目に触れることが少ないので、興味を引くようです。
 
今回のは自分たちのものなので参考までにちらとご覧いただこうと思います。
 
まずは店主が3年くらい着ているカディーシャツです。
 

 
元は、もう今は展開がないチャコールのような色だったのですが、よく夏も羽織として着ていて、日焼けと繰り返しのお洗濯での退色で茶色っぽくなっていました。
でもその変化した色味も好きで、藍とか黒染めで濃くしてしまうのもなぁ、と思い、薄茶のように染まる胡桃で染め重ねていただきました。
褪せていた部分との色差を目立たなくするために2度染めていただいたようで、あぁ、得も言われぬ味わいある色合いとなっています。
 

 
と、ここまで書いて、補修前のbeforeがないじゃん!と気づきました。
でも、悪くなって帰ってくることはないのでとりあえずafterだけでも伝わるものがあると思います。
過去は心の中にしまっておきます。
 
はい、次。
 

 
ごぞんじ(?)、店主が1年の半分は履いていると云われる麻綿ロングパンツ。なぜそんなことが判るかって?だいたい二日にいっぺんは履いているからですよ。
 
実はこちらは一度、黒染め補修をお願いしています。
履き込みくったり良く馴染んだ生地、でもたくさん履いていたら日に焼けてしまいます。多少の退色は生地の質感的にも、これはこれでいいなとなるのですが、
あまりに焼けすぎてしまうとやはり履きにくくなってしまうものですよね。
そんな馴染んだ生地が再び色を取り戻して帰ってきたあの感動は忘れられません。そりゃまたたくさん履いてしまいます。
そして、遂に、擦れて御尻に小穴が開きました。※こちらももちろんbefore写真はありません。
 
股下や御尻の部分は、歩くときや座る時に擦れるので、実は膝などよりも生地が傷みやすく、裂けることが多いんです。
穴が開いたらちょっとはずかしい場所ですが、そういう理由なので堂々としましょう。
そんな場所なので、実際に穴が開いている箇所の周りの生地も実は同じように傷んでいることが多いので、ちょっと広く予想される範囲に裏から当て布をしてステッチを走らせます。
今回の補修を見ると、ちょうど可動が多い部分で、今後のことや履き心地のことも考えて左右対称且つ立体的に補修をしていただいています。
写真の様にステッチの入れ方も素晴らしく、実物をいろんな方に見ていただきたいのですが、ちょっとはずかしい場所なのでお見せすること叶いません。
 
また同様に擦れの多いポケット口も若干芯地が覗いていたので端をまつり、補修のミシンを入れていただいています。ご丁寧に問題のなかったもう一方のポケット口まで、、!

 

 
 
最後は妻のカットソー。
まず、こちらも2年ほど着ているのですが、切り放しの衿ぐり、袖口、裾のほつれ、衿端の裂けもありません。
最初はみなさん、その点を心配されるのですが、これをみると安心していただけます。
 

 
今回は脇下の縫いが外れていたのですが、そこは綺麗に直していただいたのでafterの写真も撮っていません。
また今回は色の変化について、最初は染め直しも視野にいれていたのですが、ニット物の染め直しは今まで無く、生地への負荷を考え相談したところ、
繊細な超長綿の柔らかさが失われないように、染め直しではなく、表面の細かな毛羽立ちを※バイオウォッシュで取り除き整えてみましょう、というご提案をいただきお願いしたところ、見事に色抜けしたような白い毛羽立ちがなくなり青い艶が戻ってきました。
 
このようにMITTANでの補修は、ただ単に目に見える問題に対してだけではなく、依頼人の要望に対し真摯に答えつつも、この先まだまだ着続けていく為に、人にとって服にとって
果ては環境にとって負荷のもっとも少ない最良の方法を考え選択してくれます。
 
 
お気に入りの衣服の寿命を延ばしてくれるだけではなく、その補修を通して自らの服への接し方を見つめ直す機会を与えてくれる、そんな気がしています。
 
作り手の方々の持つ責任、それを選び着ていく僕らの責任。
それぞれの想いに触れていける衣服は幸せな一生を得ることができるんだろうなぁって思います。
なんかしんみりしましたが、大切に着ている衣服の蘇る姿を是非色んな方にも体験して欲しいです。
 

何度か触れましたが、こうやって自分たちが着込んでいる服の姿や、体験が一番説得力のある接客なんですよね。
僕らはたぶん皆さんが思っているより、多くの服を季節ごとに買っていなくて、気に入ったものを長く着ます。着倒します。
お店自体も衣服をあまりファッションとしては見せていないので、常に真新しい色んな服を着るより、着馴染んだお気に入りの恰好で、その姿がなんかいいなぁって思ってもらえたら嬉しいんですよね。
この週末は補修したものをたぶんお店で着ているので、それもまた見て触れてやってください。それでは。
 
 
※バイオウォッシュ
微生物の持つ酵素の作用を利用し、繊維の表面や毛羽を食べさせて生地肌を整えさせる二次加工。
生地を柔らかくしたり、ユーズド加工などにも用いられる。