たためないっていうのは言い過ぎですが、たたみにくい服っていうのがあると思います。
今回お話しするのは、デザインや生地が変わっていてたたみにくいというものではなく、一見するとシンプルで普通なのになぜかたたみにくいという服のことです。
その理由は単純で、ちゃんとヒトのカタチで作ってあるからです。
そんな立体構造物をきれいに平たく四角にたたむには、たたみのテクニックが必要になってきます。
解り易い例が、一度着用した服は少し歪んで最初よりきれいにたたみにくくなるということです。
カットソーなどではより顕著ですが、その歪みはそれを着た人のカタチに変化したということなのです。
でもそれを考えて形作るということは単純なことではなく実際はすごく突き詰めるのが難しいことなのです。
いわゆる既製服とされるものは、誰が着用するかは限定できないので、
誂えた服に比べて”ある程度の形”で作られます。
その制約の中で着心地と着た時の美しさを両立させるには、
ヒトのカタチと服の構造、生地の特性、その他様々な要素を考えなければなりません。
ゆるいシルエットの服が着心地がいいのは当たり前なのです。
柔らかい生地を使った服が着心地いいのも当たり前なのです。
途方もない追及の果てに一見シンプルな”たためない服”は作られるのです。
写真のシャツは取扱いのあるniuhansのもの。
シンプルなデザインですが、滑らかな生地、前後の身頃のバランス、袖付、襟の立ち上がり、運針の幅など、、
服を構成するすべての事柄に作り手の意識が息づいています。
niuhansの服たちはシャツに限らず、一見シンプルなロンTに至るまで
すべてたたみにくいです。陳列が大変です。
そしてすべての服が、飾らず、美しく、着心地がいいのです。
実際に触れてみて、着てみるとこれまでに長々と綴ってきた
”服はヒトのカタチをした立体構造物”というあたりまえなことに改めて気づかせてくれます。
でも、デザイナーさん自身は、展示会でも、メディアでもそのことを
ほとんど語りません。
きっと本人にとってはあたりまえな事として捉えられているのでしょう。
でもそんなあたりまえなことをしっかりやっているブランドがどれだけあるか、、、
年齢や性別、国境や時代を超えて着てもらえる服をつくりたい。
そんな強い思いが静かに込められています。
多くを語らないビジュアルが美しいサイトです。
ぜひお店でその着心地とたたみづらさを試して頂ければと思います。